学生の頃から学芸会で独唱したり、中央口演大会に出場したり踊ったりしていた。部活はサッカー部で本格的にレッスンに通って歌や踊りを習うなどはなかった。でも歌や踊り、話術を通して人に感動を与える喜びや魅力を感じていた。そんな中、小５の冬にソルマジ公演の大きい舞台に立つ機会が訪れた。今でも鮮明に覚えている。親元を離れて2か月以上、日本各地から平壌に集まった在日朝鮮学生少年芸術団メンバーとの日々はかけがいのない一生の宝物だ。僕は作品の冒頭で祖国の全人民に新年の挨拶を述べる大役を任された。色んな感情が込み上がってきて涙が溢れ出たが自分の気持ち、在日朝鮮学生みんなの気持ちをしっかり伝えようと力いっぱい表現した。その頃から舞台に対する熱い思いを抱き始めたと共に使命感みたいなものも持ち始めた。先代が築きあげた大切なものや守るべきもの、世代を越えて継承し発展させたかった。高校の頃は平壌音楽舞踊大学通信教育学部で毎年、夏休み期間、優秀な先生の指導の下で音楽理論や声楽、チャンダンなどを学んだ。その過程を通じて迷いなく入団を決意した。
　歌舞団としてのやり甲斐は特に1世のハラボジ、ハルモニ達が３世の僕が歌う民謡に合わせて踊ってくださる時、なんとも言えない幸せな感情が沸く。小さい子供から年配の方まで僕たちのステージを観て喜んでくださる姿はいつも僕たちの背中を押してくれる。もっと努力して経験して学んで伝えよう。そんな強い気持ちを持てる。歌えば歌うほど会えば会うほど踊れば踊るほど民族教育への感謝の気持ち、色んな方々への感謝の気持ちが大きくなっていく。会場がひとつになったとき、悩んでいたことや迷っていたもの、すべて吹っ飛ぶ。僕は在日朝鮮人なんだ、誇らしい民族の一員なんだ。今、やるべきもの、出来るもの迷わず全て精一杯やってみようと毎日、思う。進めば必ず答えは出る。今、すごく充実している。入団して11年目、感謝の気持ちと希望でいっぱいだ。
　文化は素晴らしい力を持っている。朝鮮人としてウリ文化を知り表現することはただただ自然なこと。だが、異国の地で暮らす在日にとってウリ文化に触れたり学ぶことは容易くない。でも言葉を知り、歴史を知り、文化を知ればもっと自分のことを好きになれる。自信にもつながる。どんな人生を歩むのかも、はっきり見えてくる。
　学生のみなさんも迷わず進もう。長いようで短い人生。嬉しいこと、楽しいこと、辛いこと、悲しいこと、
たくさん経験して自分らしく歩んでいきましょう。何事もやる前から諦めたり、くじけたりせず、希望と信念を持って生きよう。共に頑張りましょう！

(兵庫歌舞団H.J)