政府は必ず嘘をつく〜アメリカの「失われた10年」が私たちに警告すること
著者/堤未果
出版社/角川マガジンズ
発行年月/2012年2月10日
価格/819円
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民主主義とはいったいなんだろうか。この問いに対してたいていの人は恐らく、「民主主義とは、人民が知る権利を行使して沢山の正確な情報を集め、その情報に基づいて各々が理想の社会像について自由に考え議論し政治を動かしていく社会制度である」といった感じの回答をするのではないだろうか。
冷戦が終結した当時、社会主義陣営によって行われた恐怖の独裁政治が終わり、これからは人民が自由に政治を考える民主主義の時代がやってくると世界中が歓喜の声で包まれたそうだ。世界は自由主義の勝利によって我々に民主主義がもたらされたと考えたのである。
ところが、この歴史的大事件をきっかけに、資本力のある者が社会を牛耳るという自由主義本来の姿が鮮明になる。今までは社会主義陣営が自由主義側の強者の暴走を抑える役割を果たしていたのだが、そのタガが外れてしまったせいである。
自由主義の下では、マネーが入り込めない領域など存在しない。強者がその気になれば国を買う事だってできる。情報をマネーの力で強者の都合の良いように作り変えたり、一般大衆に流す情報を恣意的に制限したりすることもできる。
つまり、「情報を操っているのは政府やマスコミではなく、その裏で彼らを突き動かしている、莫大な資金力を持つ一部の人々である」ということである。強者の駒である政府やマスコミばかりを批判したりするようでは、真の黒幕までたどり着けず、物事の本質を見誤るというのである。
強者が与えた範囲内での情報のみに基づいて考えているのであれば、それは知る権利を行使して自由に考え議論する民主主義とは言えず、結局強者の手の内で踊らされているにすぎない。
著者が本書を通じて読者に主張したいのは、「その情報を流すことによって得するものは誰なのかをしっかり調べるべきであり、また、視点が偏らないように異なる立場から発せられた情報をしっかり確かめるべきである。これらを実践することにより、強者によって隠されていた世界の本当の姿が見えてくる。」ということである。著者はアメリカで発生した9.11やイラク戦争、最近の話題ではアメリカのウォール街デモや福島での原発事故、アラブの春などで私たちに流された情報に対して、ほとんどの人が知らされていない全く異なる立場からの情報で切り込むことにより、いかに情報が強者によって恣意的に扱われているかを明らかにしている。
自分の世界観を、強者の手にゆだねるのではなく、自らの手で切り開いていこう。そのきっかけとして本書を手に取ってみてはどうだろうか。どのようにすれば強者の手のひらから抜け出せるかについて、多くのヒントを与えてくれることだろう。
(Y・W−留学同東京)
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