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「新しい歴史教科書をつくる会」とはどのような組織か? 〜結成の経緯と近年の論調、及びその支持勢力〜
(1)<つくる会>結成の経緯
<新しい歴史教科書をつくる会>(以下、つくる会)が公式に結成されたのは1997年1月である。
この<つくる会>の結成は1993年8月から1995年2月まで存在した自民党の「歴史検討委員会」がその背景になった。この委員会は1980年代序盤に展開された右翼による第2次教科書攻撃の失敗に対する対応策としてつくられたものであった。
<つくる会>は結成以後、戦争することができる<普通の国>への憲法改正運動を展開している「日本会議」、保守右翼の機関紙「産経新聞」などと連合して、自民党の主張する「国民運動」を展開する前衛部隊としての役割をしはじめた。
<つくる会>は自分たちの同盟勢力と一緒に全国を巡り、各種講演会とシンポジウムを年間700回以上催した。また最近4年間100冊を越す図書を出版・普及した。
また彼らはそれぞれの地域の保守政治家たちを包容して、中学校教科書採択権を持っているそれぞれの地域単位の教育委員会を掌握しようとする試みを展開している。
<つくる会>は1999年10月現在ですでに47個地域48個支部(東京は2支部)を率いる巨大な組織になり、会員数は1万名を越え、彼らの成長は保守右翼的な企業と「産経新聞」の積極的な後援の下推進された。
彼らは教科書採択過程で地方議会や教育委員会に圧力を効果的に加える為に各種右派組織を結集させ、2000年4月には<教科書改選連絡協議会>を発足させた。また地方議員たちは彼らを支援するために<教科書議員連盟>を組織した。
このように<つくる会>は右翼の側がずっと以前から絶え間なく行って来ていた教科書攻撃を新しい形態で展開するための核心組織である2001年度教科書採択で惨敗した<つくる会>の事務局長高森たちは、自分たちの教科書攻撃が日本市民社会の反発と周辺国の抗議によって失敗したと主張しながら、「4年後の復讐」を彼らは教科書を製作することから教科書検定採択の段階に至るまで、つくる会の教科書採択が有利なように制度を変更し、人を配置して、日本全国での採択率10%に向かって全方位的に活動している。
(2)<つくる会>の最近の論調
シンポジュウム「日本は歴史教科書から立ち直る〜さらば「反日」物語〜」より
主 催:新しい歴史教科書をつくる会 日 時:2005年4月10日(日)場 所:文京シビック大ホール
パネリスト:
井沢元彦(作家)、古森義久(産経新聞ワシントン駐在特別委員兼論説委員)、西岡力(東京基督教大学教授)藤岡信勝(拓殖大学教授)、八木秀次(高崎経済大学助教授、「つくる会」会長)
来 賓:呉善花(評論家)
参加人数:1600名(産経新聞発表)
[パネリスト発議]
井沢元彦氏:テーマ:「反日」報道の虚構
・反日報道をするメディアと「反日」が目的である日本国内の左翼報道機関が問題である。
西岡力氏
・韓国の現政権は左翼政権であり、南北の民族和解の政策を重視している。反米感情は現盧武鉉政権の国家戦略である。
古森義久氏:テーマ:中国の国家戦略と「反日」教育
・中国の教科書は事実をゆがめておりでたらめである。盧溝橋事件、南京大虐殺、100人斬りがいい例である。
中国の教科書に掲載しているのは、疑わしい写真、でたらめの写真だらけ。
・小学生が知るべき章(項目)には日本人の残虐性、抗日運動の模様がただ羅列されており、小学生に教えられることが10数枚の残虐な写真と日本人の残虐性の誇張である。
・北京、反日デモは当局が許容して、先導している。中国の反日政策は国是であり、日本を叩くことこそ中国の娯楽である。
藤岡氏
・教科書は商品であるが、過去においては日教組が気に入るような記述内容が必要であった。その特徴は、「労働者の悲惨さを訴える」、「共産主義思想を植えつける」ことなどであった。
・1982年、侵略を進出に書き換えたとする教科書誤報事件により、教科書を通しての他国の侵略が始まった。
当時の保守政党が外国の干渉を許した。
・マルクス左翼勢力の日本政権を否定する人たちは左翼史観の上に自虐史観であり、外国の支配を利用して自虐的な教科書を推薦してきた。
・教科書採択においては、「金正日」の日本人拉致告白が一番大きい。
・現在の中国、韓国に見られる「反日運動」はそれが助長されれば助長されるほど、日本国内では逆スパイラルが増幅され、ポジティブな面をもたらす。(つくる会教科書採択に有利になる)
八木秀次氏:公民版「反日」物語への反論
・現行の教科書は子どもたちに「戦え、訴えろ」と教えている。戦う姿勢や闘争目標が教科書の中に記述されている。
・扶桑社が拉致問題を取り上げ始めた結果、国家主権、領土問題にフォーカスがおかれるようになった。
・現行の他社の公民教科書は女性、外国人、アイヌ、障害者への差別、差別、差別に満ち溢れている。定住
外国人への選挙権が差別であると書かれているが、国家主権に関わる問題であり差別ではない。少数意見を多数意見として掲載してよいのか。国家主権の意味合いがまったくない。
・「日の丸と太極旗」が並列されている教科書もある。
・「地球市民」、「人類益」などと記述しているが、「人類益」などという言葉はない。
・現行の教科書は国益を考えず、日本人のアイデンティティを教えず国家への帰属意識を奪おうとしている。
・中国、韓国の反日運動は、日本国内の反日問題が発端である。
・「扶桑社」を批判する朝日新聞はバランスを欠いており、「つくる会」教科書の不買運動を呼びかけている。
どこの国の新聞なのか?朝日新聞こそ家庭や職場で読むことはふさわしくない。
[全体討論]
井沢氏
・歴史の名場面、日露戦争とは世界史において、非白人の国が始めて白人に勝った戦争である。
・中国はいまだに19世紀の非民主の国である。
西岡氏
・最新「つくる会」公民教科書は拉致問題をしっかりと記述している。拉致問題は主権と人権問題であり、日本国の安全保障、領土問題、主権問題である。 そもそも「公民」とは日本国民を教育するものである。
・北朝鮮については独裁政権としての具体的な事例を記述するべき。
・「救う会」(北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会)が扶桑社版公民教科書を採択させるように援護する。
・現在の「反日」報道が逆に「つくる会」にとっては良い効果を生み出している。
古森氏
扶桑社の最新の歴史教科書について
・P171「台湾の開発に力を尽くした」の記述に際して台湾とは日本人にとって貴重な資産である。台湾の人たちは日本の統治が本当に良かったと感謝している。
・P250大東亜会議の記述について 日本は戦争に負けたので、負けた大東亜戦争が正しかったとはいえないが、アジア諸国にポジティブな面を与えたことは事実である。戦中、日本軍はアジアにおいては解放軍として迎えられており、日本兵が好かれていた事実もある。
・「つくる会」教科書は文部科学省により検定意見がついたので、100点満点の出来ではないが、90点の出来である。
藤岡氏
・韓国は「反日」ではない。大本は北朝鮮にある。例えば、日本大使館前で毎週行っている慰安婦のデモは北朝鮮の工作員がしている。また、今年の6月から7月にかけて「つくる会」教科書不採択のため来日する韓国のキャラバン隊を裏で糸を引いているのは北の勢力であり、横田めぐみさんを拉致した張本人らである。
八木氏
・竹島はわが国、固有の領土である。どこからどこまでが日本領土なのか学習指導要領には付記していない。韓国は歴史認識がでたらめで彼らの言う植民地政策とは一切関係ない。もともとは鳥取藩が所持していたものであり、ゆずる根拠はない。韓国が国際司法裁判所に訴えないのは不法占拠していることを示しており、韓国側にとって不利だからである。過去の根拠のないことをことさらにほじくりかえす。日本国民の立場を明確に主張するべき。
西岡氏
・韓国がおかしくなったのは歴史教育のせいである。現在の韓国は反韓史観、反日史観である。
井沢氏
・「竹島問題」において、韓国が行っていることは公正ではない。竹島は日本固有の領土であり、朝鮮半島侵略の第一歩は竹島ではない。そのような事実は図書館で調べればわかること
古森氏
・アメリカと韓国の関係が悪化している。韓国は現在自主防衛政策へ転換している。米韓同盟は終わりに向かっている。
藤岡氏
・6日付けの朝日新聞は歴史教科書が「慰安婦全社のせず」と一面で報じていたが、そもそもこれは90年に捏造されたでっちあげられた嘘であり、96年には「従軍慰安婦」、「強制連行」という嘘が全社にのっていた。それが2005年には全社の教科書から記述が消えただけである。朝日新聞は自社の報道姿勢に自信があるならば、慰安婦の記述が消えたことを社説でしっかりと論じるべきだ。「つくる会」教科書を批判することは明白な採択妨害である。朝日をとるのはやめよう。
・芥田たかしを罷免にする。委員(検定審議会の委員)違和感を覚える。議事録の公開を求める。職務上知りえたこと(秘密)を紙面に載せる。 朝日新聞の常連執筆者をなぜ、「文部科学省」が任命したのか? 検定審議委員の選定を心ある政治家と全面的に実施していく。
八木氏
・近現代史において近隣諸国条項が設けられ、今の歴史教科書はどこの国の教科書かわからない。反日のシンボル ユガンスン(朝鮮のジャンヌ・ダルク)をのせるのであれば、同じく横田めぐみさんをのせればよい。日本の教科書は不適切。1945年8月15日は朝鮮半島解放を祝う写真が掲載されている。
古森氏
・これまでの平和と反映があったのは、朝日(反面教師)と反対の立場にたったため。
・国家に忠誠を尽くす。国を愛することは当然 国際的には当然のことである。 日本という概念の否定を否定し、自国民を地球市民や世界市民という。
・東京裁判は歴史に罪悪感をもたせる
藤岡氏
・現行の教科書は韓国製の教科書である。扶桑社のみが違う。
・自民党の今年の運動方針でも重点課題として誤った歴史観を正すことがあげられている。
八木氏
・朝日新聞は「昭和の日制定」を復古主義といいたいらしい。 そして昭和天皇は戦争責任者と言いたいらしい。朝日は報道機関なのか内政干渉機関なのかわからない。
高森明勅氏(つくる会副会長)
・朝日新聞の糾弾集会になってしまった。反日の元凶は、中国、韓国でない。根本は国内の報道機関である。いびつな日本の元凶を絶ち切れば、海外の反日は消滅する。
・10年前の日本はどん底であった。オウム心理教事件、阪神大震災、村山首相の謝罪決議、1996年には全ての歴史教科書に従軍慰安婦の記述が記載された。 しかしその後、国旗国歌法、有事法制、拉致問題と情勢は力強く変わってきている。(好転している)今は国家が転落して衰亡していくのか大きな岐路である。
・北朝鮮に対して、毅然とした対応で経済制裁を実施していく
・中国の内政干渉に屈せず、小泉首相に靖国神社参拝を今年は必ず8月15日にしてもらう!
・8月の全国一斉採択では「つくる会」の新しい歴史・公民教科書を10パーセント以上絶対に採択させる!
(3)支持勢力
△歴史・検討委員会
自民党が自らの手で「大東亜戦争」(アジア太平洋戦争)を総括する目的で93年8月に設置した歴史・検討委員会(以下「歴史検討委」と略)は、同年10月から95年2月まで20回の委員会を開催した。
「歴史検討委」のメンバーは衆参議員105名で、委員長・山中貞則、委員長代行・伊藤宗一郎、顧問・奥野誠亮・橋本龍太郎・藤尾正行・武藤嘉文など、事務局長・板垣正、委員には石橋一弥・江藤隆美・衛藤征士・梶山静六・塩川正十郎・鈴木宗男・中山太郎・額賀福志郎・保利耕輔・松永光・三塚博・森喜朗・片山虎之助・村上正邦など歴代文部大臣、派閥の領袖など自民党の幹部が参加していた。また、委員の中には、後述する日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会(以下、「若手議員の会」と略)を結成する中心メンバーの安部晋三・衛藤晟一・河村建夫・中川昭一・平沼赳夫など15名が含まれていた。「歴史検討委」は、後に「つくる会」を立ち上げる西尾幹二や高橋史朗などを講師に招いて議論し、それをまとめて、「日本の戦争は正しかった」という内容の『大東亜戦争戦争の総括』(展転社)を95年8月15日に出版した。この日は、自民党と連立を組んでいた社民党の村山富一首相(当時)が侵略戦争や植民地支配を反省する談話を出した日であるが、この本の内容はその談話を全面的に否定するものである。
「歴史検討委」の総括は、日本の行った「大東亜戦争」(アジア太平洋戦争)は、自存・自衛のアジア解放戦争で侵略戦争ではなかった、南京大虐殺や「慰安婦」は事実ではない、加害・戦争犯罪はなかった、という結論をだした。そして、侵略戦争や加害の記述を教科書から削除させるために「新たな教科書のたたかい」(教科書「偏向」攻撃)の必要性を強調していた。さらに、このような戦争・歴史認識を国民に定着させる「国民運動」を、学者を中心に展開することを提起していた。これを受けて、97年1月、学者を中心にした「国民運動」組織として「つくる会」が結成され、教科書の侵略・加害記述を誹謗し、「日本の戦争は正しかった」と書いた教科書を発行して、学校現場に持ち込もうとしたことは周知のとおりである。(「歴史検討委」については、俵著『徹底検証・あぶない教科書』学習の友社参照)
△日本会議国会議員懇談会
改憲・翼賛の右派組織である日本会議(会長・三好達前最高裁長官)の発足と同時に、日本会議を全面的にバックアップし連携する目的で、自民党の小渕恵三・森喜朗、新進党の小澤辰夫が発起人になって、97年5月29日に結成されたのが、日本会議国会議員懇談会(以下、「日本会議議連」と略)である。現在の会長は麻生太郎総務相、会長代理・中川昭一経済産業相、幹事長・平沼赳夫前経済産業相で衆参242名が参加する(2002年4月現在)超党派の議員連盟である。
日本会議は付属機関として、新憲法研究会(代表・小田村四郎副会長)、政策委員会(代表・大原康男常務理事)、国際委員会(座長・竹本忠雄代表委員)、日本教育会議(座長・石井公一郎、主査・高橋史朗「つくる会」副会長)、日本女性の会(安西愛子副会長)などを設置して活動している。また、同組織の宣伝媒体として出版社・明成社(社長・石井公一郎)を設立しているが、明成社は、歴史歪曲の高校教科書『最新日本史』や南京大虐殺を否定する『再審・南京大虐殺』(竹本忠雄編著)などを出版している。三好・小田村・大原・石井らは「つくる会」の賛同者であり、「つくる会」と日本会議を結び付けているのが高橋史朗である。
「日本会議議連」は、「歴史・教育・家庭問題」(座長・高市早苗前経済産業副大臣)、「防衛・外交・領土問題」(座長・安部晋三自民党幹事長)、「憲法・皇室・靖国問題」(座長・鴻池祥肇前防災相)の三つのプロジェクトを設けて、日本会議と協議し、日本会議の要求・政策を国政に持ち込む活動をしている。この連携によってつくられたのが『心のノート』(事実上の国定道徳教科書)である。今日の日本では、右翼組織の政策・要求が連携する議連を通じて国の政策になっていくという恐ろしい構図ができあがっていることの例証である。
「日本会議議連」は、2000年10月13日の総会で、「教育基本法改正問題に関する決議」を採択し、教育基本法を早期に「改正」する報告を出すように教育改革国民会議に圧力をかけた。
△神道政治連盟国会議員懇談会
神道政治連盟国会議員懇談会(以下「神道議連」と略)は1970年に設立された。森喜朗首相(当時)が2000年5月15日に「日本の国はまさに天皇を中心としている神の国であるぞ、ということを国民にしっかりと承知していただく」という「神の国」発言行ったのは、この「神道議連」の結成30周年の祝賀会であった。現在の会長は綿貫民輔、事務局長は安部晋三、副会長に古賀誠・平沼赳夫・町村信孝・青木幹雄などが名を連ね、森喜朗は顧問で衆参228名の議員が所属している(2000年5月現在)。神道政治連盟は「天皇の大御代の光栄と永久を祈る。これが、日本人の繰り返してきた祭りの心であり、ここに神道的な日本国民の良心的な社会観があり、国家観がある」(神道政治連盟『綱領解説』)という、まさに「天皇を中心とした神の国」の実現をめざす政治結社である。この考え方に賛同・支持し、それを国会・政治の場で実現するために活動しているのが「神道議連」である。
△日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会
「若手議員の会」は、「つくる会」が発足した1月後の97年2月27日に自民党の当選五回以下の議員を中心に結成された議連である。代表は中川昭一、事務局長は安部晋三、幹事長は平沼赳夫である。「若手議員の会」は、「つくる会」と綿密に連携し、「つくる会」の活動を全面的にバックアップしてきた。「若手議員の会」は、99年に文部省の教科書課長などの幹部や教科書会社社長、教科書執筆者などを呼んで、侵略戦争や「慰安婦」問題の教科書記述について激しい詰問・追及を行った。さらに、「慰安婦」問題で旧日本軍と日本政府の関与を認めた93年の河野洋平官房長官(当時)談話に対して、「確たる証拠もなく『強制性』を先方に求められるままに認めた」と非難し、河野を会に呼びつけて撤回を迫った。「若手議員の会」は、「通算10回にわたる勉強会によって、いかにわが国の歴史教育には深刻な問題が存在しているか、あるいはいわゆる慰安婦問題がいかに歪曲(わいきょく)されて伝えられているか、そして日本外交のこれまでのあり方(いわゆる謝罪的体質)がいかに今日の問題を招く端緒となったか…等々の事実が明らかになった」とし、それを改める「国民運動を精力的かつダイナミックに展開していく」と主張していた(安部晋三のホームページ)。この「国民運動」が「つくる会」と連携した教科書攻撃であり、「つくる会」教科書の採択活動支援であった。
△超党派議連・歴史教科書問題を考える会
「つくる会」教科書への批判が高まり、採択を阻止する市民などの運動が高まりはじめた2001年6月26日に、「つくる会」の教科書採択活動をサポートする目的で、「若手議員の会」の活動を民主党議員などと連携して進めるために設立されたのが超党派の議員連盟・歴史教科書問題を考える会(会長・中川昭一、以下「超党派の会」と略)である。「超党派の会」には、自民党以外に民主党、自由党(当時)、保守新党、無所属の会の議員が参加している。「超党派の会」は、文科省幹部を呼びつけて、「南京の犠牲者数が限りなくゼロに近いという説」も教科書に載せろ、「南京大虐殺まぼろし論」も学説だから両論併記で記述させろ、検定基準の「近隣諸国条項」(日本の侵略戦争記述を検定で削除・修正させないと国内外に約束した内容)を無くせ、などと迫ってきた。「超党派の会」は、市民運動を敵視し、教科書採択に市民の声を反映させることを違法行為と決めつけ、01年8月の採択後、「人間のくさり」などの市民の活動を排除するように文科省に圧力をかけてきた。これを受けて、文科省は、02年8月、教科書採択にあたって、市民運動などが教育委員会に要請する活動があった場合には、警察と連携をとって対処するように、という「通知」を都道府県教委に出した。
△教育基本法検討特命委員会
中央教育審議会の教育基本法「見直し」議論がはじまった2002年1月31日、自民党は政調会内に教育基本法検討特命委員会(以下、「特命委」と略)を設置した。「特命委」の役員は、委員長・麻生太郎、委員長代理・中曽根弘文元文相、事務局長・河村建夫、最高顧問・森喜朗、顧問・歴代文相、文科相経験者である。「特命委」は、高橋史朗・「つくる会」副会長(「日本の教育改革」有識者懇談会運営委員長)、石井公一郎・日本会議副会長、西沢潤一・新しい教育基本法を求める会(現「日本の教育改革」有識者懇談会)会長、横山洋吉・東京都教育長、前澤克明・全日本教職員連盟委員長などを講師に招いて、毎週1回会議を開催し、自民党内の教育基本法改悪方針を固め、中教審答申にも大きな影響を与えた。また、2002年7月22日には、報道各社の論説委員を招いて意見交換会を開催してマスコミ対策にも力を入れてきた(「朝日」と「毎日」の論説委員は欠席した)。
△終戦50周年国会議員連盟
敗戦50周年の1995年8月15日に、侵略戦争を反省し、戦後処理問題に一定の見通しをつけて、アジアとの和解を実現するための国会決議が企画されていたが、それに反対するために1994年12月に結成されたのが自民党の「終戦50周年国会議員連盟」(奥野誠亮会長、板垣正事務局長、顧問・橋本龍太郎など、衆参161議員)である。この議員連盟は、日本を守る国民会議、日本遺族会、神社本庁、英霊に応える会、新日本協議会、明治神宮、靖国神社、神道政治連盟、教科書を正す親の会など右派勢力が、94年に結成した「終戦50周年国民運動実行委員会」(会長・加瀬俊一元国連大使、最高顧問・福田赳夫元首相)と一体となって、「日本は侵略国ではない」「戦争反省決議反対」「英霊に応える決議を」などと主張して、地方議会決議(26県、90市町村が決議)や署名運動(456万筆達成)に取り組んだ。この議連や右派勢力の運動が「成功」して、敗戦50周年決議は、当初の目論見から大きく外れ、侵略戦争の反省などまったくない内容になった。
終戦50周年国会議員連盟は、96年6月、「明るい日本・国会議員連盟」(奥野誠亮会長、板垣正事務局長)に発展的改組された。この議員連盟は、歴史・検討委員会の侵略・加害否定の「研究成果」と「業績」を受け継いで、95年1月に発足した新進党(当時)の「正しい歴史を伝える国会議員連盟」(小沢辰男会長)と共同して、96年の教科書「偏向」攻撃で中心的な働きをおこなった。同議連は、「『慰安婦』は売春婦」というキャンペーンを行い、96年6月以降は、教科書の「慰安婦」や南京大虐殺記述を攻撃し、教科書からの削除を要求して活動した。この議連の活動は、97年2月の「若手議員の会」の結成以降は、「若手議員の会」に引き継がれることになった。
※ 上記(1)と(2)は、南の市民団体≪No!歴史歪曲 Yes!東アジアの平和≫の資料を、(3)は、俵 義文氏(子どもと教科書全国ネット21)作成の≪【資料】小泉第2次内閣の超タカ派の大臣たち≫(2003年11月20日)などより抜粋(了) |
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